子どもでよくみられるアレルギー疾患
アトピー性皮膚炎
概要
アトピー性皮膚炎は、かゆみのある湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す病気です。乳児では頭や顔から始まり、体や四肢に広がることがあり、幼小児期では首や肘・膝の関節などに症状が現れやすくなります。アトピー素因や家族歴が関係することもあります。
治療では、皮膚症状をできるだけ良好にコントロールし、日常生活への支障を減らすことを目指します。悪化因子を減らし、保湿剤によるスキンケアを行うとともに、炎症がある場合はステロイド外用薬や、ステロイド以外の外用薬(タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストなど)を症状に応じて使用します。
湿疹が改善した後も、医師の指示に従って外用薬の塗り方や頻度を調整し、再燃を防ぐことが大切です。お子様の湿疹やかゆみでお困りの際はご相談ください。
診察と検査
アトピー性皮膚炎は、かゆみ、特徴的な湿疹とその分布、慢性・反復性の経過などをもとに診断します。乳児では2か月以上、その他の年齢では6か月以上の慢性・反復性の経過が診断の参考になります。乳児期は頭や顔に症状が出やすく、幼小児期では首や四肢の屈曲部、思春期以降では顔や首、胸、背中などに症状が強くなることがあります。
問診と皮膚の状態の観察が基本で、皮膚症状の範囲や程度から重症度を評価します。必要に応じて血液検査などを行うことがありますが、血液検査だけでアトピー性皮膚炎の診断を確定するものではありません。
治療
症状や季節、年齢に合わせて保湿剤によるスキンケアで皮膚のバリア機能を保つことが基本です。症状が強いときには、炎症を抑える外用薬(ステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストなど)を使用します。ステロイド外用薬は、適切な強さ・量・塗り方で使用することが重要です。症状が落ち着いた後も、再燃しやすい部位に外用薬を間欠的に使用する「プロアクティブ療法」が行われることがあります。
食物アレルギー
概要
食物アレルギーとは、特定の食品を摂取した際に、免疫の過敏な反応によって症状が起こる状態です。乳幼児期に発症することが多く、成長とともに食べられるようになることもあります。
食物アレルギーの治療では、正しい診断に基づいて、原因となる食品を必要最小限だけ除去することが基本です。血液検査の結果だけで除去する食品を決めるのではなく、実際に食べたときの症状や経過を踏まえて、食べられる範囲を評価します。過度な食物除去は、栄養不足や生活の制限につながるため、自己判断で除去・解除を行わず、医師と相談しながら進めることが大切です。
食物アレルギーの予防については、離乳食の開始を不必要に遅らせないことが大切です。通常は生後5~6か月頃を目安に離乳食を開始します。卵などのアレルギーの原因となりうる食品についても、自己判断で開始時期を遅らせる必要はありません。ただし、湿疹が強い乳児や、すでに食物アレルギーが疑われる場合は、医師に相談しながら進めることをおすすめします。
診察と検査
問診では、原因と考えられる食品を食べた後、どのくらいの時間で、どのような症状が出たのかを確認します。皮膚(発赤、じんましんなど)、呼吸器(咳や喉の違和感、ゼーゼーする呼吸など)、消化器(腹痛、嘔吐など)、その他(元気がない、顔色が悪いなど)の症状の種類や強さ、経過を確認します。
必要に応じて血液検査(特異的IgE抗体検査)や皮膚試験を行い、原因食品に対する感作(アレルギーを起こす準備ができている状態)の有無を調べます。ただし、感作があることだけで食物アレルギーと診断できるわけではありません。症状や経過を総合的に判断し、必要に応じて食物経口負荷試験を行います。
治療
保育園や学校では、安全を最優先とし、アレルギーの原因となる食品は完全に除去する対応が基本です。給食では、施設の方針と「生活管理指導表」に基づき、原因食品の除去や解除を行います。特に重症なアレルギー反応(アナフィラキシー)の既往がある場合には、必要に応じてアドレナリン自己注射薬を処方し、使用方法を指導します。
一方、ご家庭では、栄養バランスに配慮しながら、正しい診断に基づいて必要最小限の除去を行うことが大切です。食べたときの症状の強さに応じて、安全に食べられる量を検討し、医師の指示に従って、その範囲で摂取を継続します。重症例や判断が難しい場合は、食物経口負荷試験に対応できる医療機関をご紹介します。
気管支喘息
概要
気管支喘息は、気道に慢性的な炎症があり、気道が狭くなりやすくなることで、咳やゼーゼーする呼吸(喘鳴)、息苦しさなどを繰り返す病気です。小児では、かぜなどの感染をきっかけに症状が出ることも多くみられます。治療の目標は、喘息発作を予防し、日常生活や運動をできるだけ制限なく過ごせるようにすることです。ほこりやダニ、たばこの煙などの刺激をできるだけ避け、症状や重症度に応じて吸入ステロイド薬などの長期管理薬を使用します。発作時には、気管支拡張薬などで症状を和らげます。薬の種類や使い方は、年齢や症状に合わせて調整します。呼吸が苦しそう、顔色が悪い、会話や水分摂取が難しいなどの場合は、速やかに医療機関を受診してください。
診察と検査
診察では、咳、喘鳴、息苦しさがいつ、どのような状況で起こるのか、繰り返しているかなどを確認します。また、気管支拡張薬の吸入で咳や喘鳴が改善するかどうかが診断の参考になります。年齢や症状に応じて、呼吸機能検査、アレルギー検査などを行うことがあります。
本人や家族にアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎などがある場合には、喘息を合併する可能性があります。幼児ではかぜをきっかけに喘鳴を繰り返すことが多く、年長児では運動時や冷たい空気を吸ったときに症状が出ることもあります。また、かぜとの区別として、喘息は寝る前と起きたときにせき込むことが多く、寝ている間は咳が止まることが知られており、症状の経過を詳しく確認することが大切です。
治療
喘息では、発作を繰り返さないための長期管理が重要です。気道の炎症が続くと、気道が過敏になり、症状を繰り返しやすくなるためです。
まずは、ほこりやダニを減らす、たばこの煙を避けるなど、症状を悪化させる環境因子への対策を行います。
治療には、喘息の発作に対する気管支拡張薬(プロカテロール、サルブタモールなど)と発作を予防する吸入ステロイド薬や抗ロイコトリエン薬などがあります。症状の頻度や重症度、コントロール状態に応じて治療を選択し、定期的に評価しながら、必要に応じて治療を強めたり(ステップアップ)、弱めたり(ステップダウン)します。
アレルギー性鼻炎
概要
アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜が特定の異物(アレルゲン)に反応し、くしゃみ・鼻水・鼻づまりを繰り返す病気です。ダニやハウスダストによる「通年性」と、スギやヒノキなどの花粉などによる「季節性」があります。幼児期から症状が出現することがあり、鼻水、鼻づまりが続くと睡眠の質や日中の集中力に影響することがあります。
治療では、原因となる物質を避けることが基本です。こまめな掃除や寝具の手入れ、花粉シーズンのマスク・眼鏡の着用などを心がけましょう。症状が続いて日常生活に支障がある場合は、去痰薬、抗ヒスタミン薬などの抗アレルギー薬や、鼻噴霧用ステロイド薬などを使用します。スギ花粉やダニが原因の場合、適応を確認したうえで舌下免疫療法を検討することもあります。症状や年齢に応じて治療を選択する必要があるため、気になる症状があればご相談ください。
診察と検査
くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが出るきっかけや季節、時間帯を問診し、鼻の粘膜の状態を観察して診断します。また、症状の頻度や日常生活への影響などから重症度を評価します。
血液検査でアレルゲンを調べることで、原因を特定できる場合があります。原因となるアレルゲンがわかれば、それをできるだけ避けることや、症状の出やすい時期に合わせて薬を使用するなど、具体的な対策につなげることができます。
治療
アレルギー性鼻炎の治療では、症状のない状態、または日常生活に支障のない状態を目指します。
鼻炎治療は症状に応じて、抗ヒスタミン薬の内服や鼻噴霧用ステロイド薬などを組み合わせます。花粉症のように季節によって症状が変化する場合は、飛散時期の前から治療を始める「初期療法」によって、シーズン中の症状を軽減できる可能性があるとされています。
原因抗原が明確な場合は、適応を考慮したうえでアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)を検討します。
舌下免疫療法
概要
舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲン(ダニやスギ花粉)を舌の下に少量ずつ投与し、継続することで、アレルギー症状を軽減する治療法です。日本では5歳以上から治療が可能で、ダニやスギ花粉によるアレルギー性鼻炎に対して行われています。症状を抑えるだけでなく、治療終了後も効果が持続することがありますが、効果や持続期間には個人差があります。
有効性と安全性
- ダニやスギ花粉によるアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法は、7~8割の患者様で有効性が認められています。
- 治療を4~5年間継続することにより、治療を中止してからも数年間は改善した体質が維持されます。
- 主な副作用は、口腔内の違和感や耳のかゆみなどですが、中には腹痛、喘鳴、気分不快などの強い症状が出ることがあります。
- ほとんどの副作用は、アレルギーに対する薬剤で軽減されますが、症状が強い場合は治療を中止します。
実際の治療
- 血液検査を実施し、ダニやスギ花粉に対する感作を確認し、症状や年齢、ほかのアレルギーの存在を踏まえて治療の適応を判断します。
- 1日1回舌下に薬剤を投与します。投与後1分間は舌下に保持し、その後に飲み込みます。投与後5分間はうがいや飲食を控えます。
- 定期的に診察を行い、症状や副作用の有無を確認しながら治療を継続します。治療期間は一般に3~5年程度を目安としますが、個々の状況に応じて判断します。