子どもでよくみられる心身症
起立性調節障害(OD)
概要
起立性調節障害は、立ち上がったときなどに血圧や心拍数などの調節がうまくいかず、立ちくらみ、めまい、頭痛、倦怠感、朝起きられないなどの症状がみられる病気です。体が大きく変化する成長期を中心に多くみられ、午前中に症状が強く、午後から軽くなる傾向があります。
治療では、症状が改善するまで時間がかかることがあるため、焦らずに取り組むことが大切です。規則正しい生活リズムを心がけ、十分な水分と適切な塩分をとり、ゆっくり立ち上がる、軽い運動を続けるなどの工夫を行います。また、学校生活や家庭環境への配慮、心理的なサポートも重要です。必要に応じて薬物療法を行います。本人の体調に合わせて、できることを少しずつ増やしていくことを目指します。
診察と検査
以下に示す症状の有無や程度を確認します。特に、午前中に症状が目立ち、午後から回復することがあります。
- 立ちくらみやめまいが頻繁に起こる
- 立ち続けると気分が悪くなり、ひどいと倒れることがある
- 入浴時や嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
- 少し動くと動悸や息切れがする
- 朝なかなか起きられず、午前中に調子が悪い
- 顔色が青白くなる
- 食欲が低下する
- おへその周囲の腹痛を訴える
- 倦怠感や疲れやすさがある
- 頭痛がある
- 乗り物に酔いやすい
身長・体重、血圧や脈拍などを確認し、必要に応じて血液検査を行い、貧血、甲状腺疾患など、ほかの病気が隠れていないかを確認します。必要に応じて新起立試験を行い、起立性調節障害のタイプや重症度を評価します。
治療
起立性調節障害は、適切な治療によって改善が期待できますが、症状が改善するまで時間がかかる場合があります。本人の「怠け」や「気持ちの問題」ではなく、身体症状を伴う病気であることを本人や家族、学校関係者が理解することが大切です。
日常生活の工夫で症状を和らげることができます。症状と上手に付き合いながら、できることを少しずつ増やしていくために、以下の方法を取り入れてみましょう。
- 早寝早起きなど、規則正しい生活リズムを心がける
- 立ち上がるときは、頭を少し下げながらゆっくり立つ
- 長時間立つ必要がある場合は、足を交差させるなどの工夫をする
- 十分な水分をとり、医師の指導のもとで適切に塩分を摂取する
- 筋力低下を防ぐため、毎日30分程度の歩行や軽い運動を行う
必要に応じて血圧や脈拍を調整する薬を使用します。学校生活や家庭環境などの心理・社会的な要因が症状に影響することもあるため、環境調整や心理的なサポートも重要です。
過敏性腸症候群(IBS)
概要
過敏性腸症候群は、腹痛に加えて下痢や便秘などの便通異常を繰り返す病気です。腹痛が2か月以上にわたり月4日以上みられ、排便に関連する、排便回数が変化する、便の形状が変化する、といった特徴を伴う場合に過敏性腸症候群が考えられます。身体の成長が著しい学童期後半から思春期にかけて多くみられます。
治療では、症状を和らげながら、日常生活や学校生活を無理なく送れることを目指します。まずは生活リズムや食事内容を見直し、症状を悪化させる食品や生活習慣がないか確認します。必要に応じて、便通を調整する薬や整腸薬などを症状に合わせて使用します。
また、過敏性腸症候群では、ストレスや学校生活などの心理・社会的な要因が症状に影響することがあります。腹痛や便通異常が続く場合には、ほかの病気がないかを確認しながら、身体面と心理・社会面の両方から治療を進めることが大切です。
診察と検査
腹痛の頻度、排便との関係、便の回数や形状、食事との関係、学校生活などへの影響を確認します。過敏性腸症候群では、下痢型、便秘型、混合型、分類不能型の4つに分類されます。
発熱、体重減少、血便、夜間症状などがないかを確認し、症状に応じて炎症性腸疾患や感染症、便秘など、ほかの病気との区別を行います。必要に応じて血液検査、便検査、腹部超音波検査などを行います。
治療
症状に応じて、整腸薬、便通を調整する薬、消化管運動機能を調整する薬などを使用します。そのうえで、食事や日常生活を見直し、症状を悪化させる要因を減らしていきます。さらに、心理的な緊張や不安が症状に影響することもあるため、安心して生活できる環境を整えることも重要です。
機能性ディスペプシア
概要
機能性ディスペプシアは、胃の運動機能の低下や胃が敏感になることで、みぞおちの痛み・灼熱感、食後の膨満感、少し食べただけで満腹になるなどの症状が続く病気です。
診察と検査
診察では、みぞおちの痛みや不快感、食事との関係、症状が続いている期間などを確認します。排便との関係や、食欲、体重の変化なども重要です。機能性ディスペプシアは、ほかの病気では説明できない症状が続く場合に診断されるため、症状に応じて必要な検査を行います。
治療
治療では、症状に応じて胃腸の運動を改善する薬や胃酸の分泌を抑える薬を使用します。高脂肪食品、カフェイン、香辛料、炭酸飲料など、症状を悪化させる食品を控えることも大切です。また、心理的・社会的な要因が症状に影響することがあるため、睡眠や生活リズムを整え、学校や家庭での環境にも配慮することが大切です。
周期性嘔吐症候群
概要
周期性嘔吐症候群は、数時間から数日続く激しい嘔吐を繰り返し、発作のない時期には比較的元気に過ごせる病気です。学童期に多く、感染、疲労、睡眠不足、精神的な緊張など、さまざまな要因が発作のきっかけになることがあります。
治療では、発作をできるだけ早く落ち着かせ、脱水や低血糖を防ぐことが大切です。嘔吐が続いて水分がとれない場合は、点滴による補液が必要になることがあります。症状に応じて吐き気止めなどを使用することもあります。また、発作の誘因を記録し、生活リズムを整えることも予防につながります。繰り返す嘔吐や強い腹痛などがある場合は、小児科にご相談ください。
診察と検査
発作の回数、持続時間、発作と発作の間の状態、発作のきっかけなどを確認します。精神的な緊張や疲労、睡眠不足などが関係することもありますが、周期性嘔吐症候群と診断するためには、感染症、消化器疾患、代謝性疾患、神経疾患など、ほかの病気についても症状に応じて確認することが大切です。
本人や家族に片頭痛がある場合や、乗り物に酔いやすい場合には、周期性嘔吐症候群との関連を考慮することがあります。
治療
発作時に嘔吐が激しく、水分をとることが難しい場合には、早期に点滴による補液が必要になることがあります。症状が軽ければ、吐き気止めを使用しながら、少量ずつ水分をとるようにします。
発作の頻度が多い場合や、発作によって日常生活に大きな支障がある場合には、生活リズムを整えるとともに、片頭痛の予防薬などを検討することがあります。
周期性嘔吐症候群は片頭痛と関連があることが知られており、成長とともに片頭痛がみられるようになる場合もあります。
機能性頭痛
概要
子どもの頭痛では、片頭痛や緊張型頭痛などの原因となる病気がない一次性頭痛がよくみられます。ストレス、疲労、睡眠不足などが頭痛を誘発したり悪化させたりすることがあります。片頭痛は頭の片側または両側がズキズキと痛み、吐き気を伴うことが多く、緊張型頭痛は頭全体が締めつけられるように痛むことが多いとされています。
診察と検査
頭痛の場所、強さ、持続時間、発症頻度、誘因などを詳しく確認します。ストレスや疲労、睡眠不足、緊張などが頭痛を誘発したり悪化させたりすることがあります。また、悪心・嘔吐、光や音への過敏などを伴うことがあります。
子どもでは、顔色が悪くなって横になる、暗く静かな場所で休む、好きな遊びをしなくなるなど、活動性の低下として現れることもあります。キラキラした光が見える、物が大きく・小さく見えるなどの「前兆」を伴う場合もあります。
突然の激しい頭痛、意識障害、けいれん、手足の動きの左右差、繰り返す嘔吐などがある場合は、必要に応じて画像検査などの追加検査を行います。
治療
治療では、頭痛発作をできるだけ軽くし、日常生活への影響を減らすことを目指します。
頭痛の治療では、睡眠リズムを整え、3食を規則正しくとり、適度な運動を行うなど、生活習慣を整えることが基本です。症状が強い場合には、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどの鎮痛薬を使用することがあります。ただし、鎮痛薬を頻繁に使用すると、薬剤の使用過多による頭痛につながることがあるため、使用回数には注意が必要です。
頭痛の頻度や症状を記録し、生活への影響を確認しながら治療を進めることが大切です。
チック症
概要
チック症は、まばたきや顔をしかめる、首を振る、咳払いなどの動きや発声を繰り返す病気です。症状には波があり、不安や緊張、疲労、興奮などで強くなることがあります。チックは本人の性格や親の育て方が原因ではなく、脳機能の発達などが関係すると考えられています。多くは小児期に発症し、症状が改善したり再燃したりしながら、成長とともに軽快していく傾向があります。
診察と検査
チック症は、症状の種類や出現時期、頻度、経過などを詳しく確認して診断します。チック症そのものを診断するための特別な検査はありませんが、ほかの神経疾患やてんかんなどとの区別が必要な場合には、脳波検査や画像検査などを行うことがあります。
また、ADHDや強迫症、不安症などを伴うことがあるため、学校生活や日常生活への影響についても確認します。
治療
チック症では、まず本人や家族が症状の特徴や経過を理解し、安心して過ごせる環境を整えることが大切です。チックを過度に指摘したり、無理にやめさせようとしたりすることは避け、学校でも周囲の理解を得られるよう配慮します。
症状によっては、チックが起こりそうな感覚に気づき、チックと両立しない別の行動を行う習慣逆転法などの行動療法を検討します。
症状が強く、日常生活や学校生活に支障がある場合には、必要に応じて薬物療法を検討します。ADHDや強迫症などの併存症がある場合は、それらへの対応も重要です。
心因性頻尿
概要
心因性頻尿とは、膀胱炎などの明らかな病気がないにもかかわらず、精神的な緊張や環境の変化などをきっかけに、昼間に尿意が頻繁になる状態です。幼児期から学童期にみられることがあり、夜間の睡眠中には症状がみられないことが多いのが特徴です。
診察と検査
学校の授業中など、特定の場面で強く症状が出ることがあります。まずは膀胱炎や糖尿病などの病気が隠れていないか確認するため、尿検査などを行います。
治療
心因性頻尿では、尿意に対する不安や、家族が頻尿を気にしすぎることが、症状を長引かせることがあります。まずは、重大な病気がないことを確認したうえで、「トイレに行っても大丈夫」と本人に安心してもらうことが大切です。トイレの回数を無理に減らそうとせず、家族は過度に心配したり注意したりせずに見守ります。
症状が長引く場合や、学校生活への影響が大きい場合には、心理的なサポートや必要に応じた薬物療法を検討することがあります。