子どもは免疫力が発達段階にあり、また保育園や学校など集団で過ごす時間が長いことから、さまざまな感染症にかかりやすいとされています。年齢によってかかりやすい感染症や認められる症状が異なることがあります。多くの感染症は自然経過で軽快しますが、保育園や学校での流行を防ぐため、学校保健安全法という法律により、一部の感染症については登校・登園を控える期間(出席停止期間)の基準が定められています。ここでは、代表的な感染症についてまとめました。
小児の感染症
小児の感染症

子どもは免疫力が発達段階にあり、また保育園や学校など集団で過ごす時間が長いことから、さまざまな感染症にかかりやすいとされています。年齢によってかかりやすい感染症や認められる症状が異なることがあります。多くの感染症は自然経過で軽快しますが、保育園や学校での流行を防ぐため、学校保健安全法という法律により、一部の感染症については登校・登園を控える期間(出席停止期間)の基準が定められています。ここでは、代表的な感染症についてまとめました。
溶連菌感染症は、A群β溶血性連鎖球菌によって起こる感染症で、特に幼児から学童期の子どもに多くみられます。発熱、強いのどの痛み、扁桃腺の腫れや白い付着物、首のリンパ節の腫れなどが特徴です。通常はかぜにみられる咳や鼻水が目立たないこともあります。診察では、のどの状態や症状を確認し、必要に応じて迅速抗原検査などを行います。治療には抗菌薬を使用し、処方された期間は症状が改善しても最後まで内服することが大切です。適切に治療することで、リウマチ熱などの合併症を予防できます。治療後に血尿やむくみ、尿量の変化などがみられた場合は、溶連菌感染後腎炎の可能性もあるため、医療機関に相談しましょう。
抗菌薬の内服後24~48時間を経過するまでが出席停止の基準です。
咽頭結膜炎(プール熱)は、アデノウイルスによって起こる感染症です。発熱、のどの痛み、結膜炎による目の充血や目やになどが主な症状で、夏季に流行することがあります。高熱が数日続くこともありますが、一般的には5日程度で徐々に改善します。診察では、発熱やのど、目の症状を確認し、必要に応じてアデノウイルス抗原検査を行います。アデノウイルスに対する特効薬はないため、治療は水分補給や安静、解熱剤などによる対症療法が中心です。結膜炎が強い場合には、点眼薬による治療を行います。感染力が強いため、タオルの共用を避け、手洗いを徹底することも大切です。
学校保健安全法では、発熱、のどの痛み、結膜炎などの主な症状がなくなった後、2日を経過するまでが出席停止の基準です。
マイコプラズマは、上気道炎、気管支炎、肺炎などを起こす感染症です。小学生から高校生に多く、発熱、のどの痛み、乾いた咳などがみられます。特に咳が長く続くことが特徴で、症状が進むとマイコプラズマ肺炎を起こすことがあります。肺炎になっていても、診察時の聴診だけでは異常がはっきりしない場合があるため、症状や経過によって胸部画像検査などを行います。診断では迅速検査などを参考にしながら、全身状態や症状の経過を総合的に判断します。治療では、軽症では自然に改善することもありますが、肺炎などを認める場合には、症状や経過に応じてマイコプラズマに有効な抗菌薬を使用します。十分な水分補給と休養をとり、呼吸が苦しい、食事や水分がとれない、咳が強くなっている場合には早めに受診しましょう。
明確な基準は定められていませんが、発熱や咳などの急性期症状が収まるまでが登園・登校の目安です。
ヘルパンギーナは、コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルス属によって起こる感染症です。夏から秋にかけて流行し、特に乳幼児に多くみられます。突然の発熱とともに、のどの奥に小さな水疱や赤い発疹ができることが特徴です。発熱は数日続くことがあり、下痢やけいれんを伴う場合もあります。診察では、発熱の経過と口の中の特徴的な発疹を確認して診断します。多くの場合、特別な治療は必要なく、水分補給、安静、必要に応じた解熱薬などの対症療法で自然に改善します。口の中が痛くなるため、食事や水分を嫌がることがあります。経口補水液など、糖分と水分を少量ずつ与えることが大切です。ぐったりしている、水分がほとんどとれない場合は低血糖と脱水に注意し、早めに受診しましょう。
発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれることが登園の目安です。ただし、便から数週間はウイルスが排泄されているため、便の取り扱いに注意が必要です。
手足口病は、エンテロウイルス属によって起こる感染症で、夏から秋にかけて流行します。乳幼児に多く、発熱とともに、口の中、手のひら、足の裏や膝などに小さな水疱や発疹がみられます。口の中の発疹は痛みを伴うことがあり、食事や水分をとりにくくなることがあります。下痢やけいれんを伴うこともあります。診察では、発熱の経過と発疹の分布、口の中の状態などから診断します。多くの場合は自然に改善するため、治療は水分補給や安静、必要に応じた解熱薬などの対症療法が中心です。特に小さな子どもでは、口の痛みから食事摂取量が減り、低血糖や脱水になることがあるため注意が必要です。食事がとれない、尿が少ない、ぐったりしている場合には受診してください。
発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれることが登園の目安です。ただし、便から数週間はウイルスが排泄されているため、便の取り扱いに注意が必要です。
RSウイルスは、上気道炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎などを起こす感染症です。2歳までにほとんどの子どもが感染するとされています。鼻水や咳、発熱などのかぜ症状から始まり、乳児では細気管支炎や肺炎を起こすことがあります。特に生まれて初めてRSウイルスに感染した時に重症化する可能性があります。また月齢の低い赤ちゃんでは、無呼吸などを起こすこともあるため注意が必要です。診察では、呼吸状態、喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)の有無、哺乳や水分摂取の状況などを確認し、必要に応じてRSウイルス抗原検査などを行います。特効薬はなく、治療は水分補給や安静などの対症療法が中心です。呼吸が苦しそう、顔色が悪い、哺乳量が大きく減っている、尿が少ないなどの症状がある場合は、早めの受診が必要です。重症化した場合には酸素投与や入院治療が必要になることがあります。
保育園に限り、呼吸器症状が消失し、全身状態が良くなるまでが登園の目安です。
ヒトメタニューモウイルスは、上気道炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎などを起こす感染症です。乳幼児を中心にみられ、RSウイルス感染症と似た症状を起こします。多くの子どもが5歳頃までに一度は感染するとされています。鼻水や咳、発熱などのかぜ症状から始まり、気管支炎や肺炎を起こすことがあります。診察では、呼吸状態、喘鳴(ゼーゼーという呼吸音)の有無、食事や水分摂取の状況などを確認し、必要に応じてヒトメタニューモウイルス抗原検査などを行います。特効薬はなく、治療は水分補給や安静などの対症療法が中心です。呼吸が苦しそう、夜寝られない、食事量が減っているなどの症状がある場合は、早めの受診が必要です。重症化した場合には酸素投与や入院治療が必要になることがあります。
保育園に限り、呼吸器症状が消失し、全身状態が良くなるまでが登園の目安です。
インフルエンザウイルスは、上気道炎、気管支炎、肺炎などを起こす感染症です。冬から春に流行します。突然の発熱、咳、のどの痛み、頭痛、倦怠感、筋肉痛や関節痛などが比較的急に現れることが特徴です。子どもでは発熱が高くなることもあり、食欲低下や嘔吐などの症状を伴う場合もあります。診察では症状や流行状況を確認し、必要に応じて迅速抗原検査などを行います。治療は水分補給、安静、解熱剤などによる対症療法が基本ですが、発症から48時間以内であれば抗インフルエンザ薬を使用することがあります。脱水や肺炎、けいれん、意識障害などの合併症にも注意が必要です。水分がとれない、呼吸が苦しい、意識や反応がおかしいなどの症状がある場合は早めに受診してください。
学校保健安全法では、発症後5日間経過し、かつ解熱後2日間(乳幼児の場合は3日間)を経過するまでが出席停止の基準です。
突発性発疹は、ヒトヘルペスウイルス6型などによって起こる感染症で、主に生後6か月から2歳頃までの乳幼児にみられます。突然の高熱が3~4日程度続きます。高熱のわりに鼻水や咳などの症状は目立たず、不機嫌や下痢といった症状を認めることがあります。解熱すると、胸やお腹を中心に赤い発疹が現れ、徐々に全身へ広がり、2日程度で自然に消失します。この「高熱が数日続いた後、熱が下がってから発疹が出る」という経過が特徴です。診察では、発熱の経過や全身状態、発疹の出現時期などを確認して診断します。特別な治療薬はなく、水分補給、安静、必要に応じた解熱剤などの対症療法が中心です。乳幼児では高熱に伴って熱性けいれんを起こすことがあるため、注意が必要です。多くは自然に回復しますが、心配な症状がある場合は小児科へご相談ください。
保育園に限り、解熱し、全身状態が良くなるまでが登園の目安です。
水痘は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって起こる感染症で、強い感染力を持つことが特徴です。発熱や倦怠感とともに、全身に赤い発疹が現れ、その後、水疱、膿疱、かさぶたへと変化していきます。発疹は一度にすべて出るのではなく、新しい発疹と水疱、かさぶたが同時にみられることがあります。診察では、発疹の特徴や出現の経過などから診断します。多くの場合は自然に改善しますが、年齢や症状、基礎疾患などによっては抗ウイルス薬を使用することがあります。
水痘はワクチンで予防できる感染症で、定期接種が行われています。ワクチン接種によって発症や重症化を予防する効果が期待できます。
学校保健安全法では、水疱がすべてかさぶたになるまでが出席停止の基準です。
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は、ムンプスウイルスによる感染症です。発熱があって数日後に耳下腺が腫れ、耳の前からあごにかけて腫れて見えることが特徴です。片側から腫れ始め、その後反対側も腫れることがありますが、片側だけの場合もあります。発熱や食欲低下を伴うことがあり、唾液が出るときに痛みを感じるため、食事を嫌がることもあります。唾液腺の腫れは自然に改善しますが、まれに無菌性髄膜炎、難聴、精巣炎などを合併することがあります。診察では、耳下腺や顎下腺などの腫れ方、発熱の経過、周囲での流行状況などを確認します。特効薬はなく、水分補給、安静、必要に応じた解熱薬などの対症療法を行います。強い頭痛、繰り返す嘔吐などがある場合には早めの受診が必要です。
おたふくかぜはワクチンで予防できる感染症でありますが、任意接種となります。
学校保健安全法では、耳下腺、顎下腺、または舌下腺の腫れが出てから5日が経過し、全身の状態が良好になるまでが出席停止の基準です。
伝染性紅斑(リンゴ病)は、ヒトパルボウイルスB19によって起こる感染症です。かぜのような症状がみられた後、頬が赤くなることが特徴で、その後、腕や脚などに網目状・レース状の発疹が現れることがあります。発疹が出る頃には感染力が低下しているため、元気で全身状態が良好であれば、必ずしも登園・登校を休む必要はありません。診察では、特徴的な頬の赤みや手足の発疹、発熱やかぜ症状の経過などから診断します。特別な治療薬はなく、発熱や関節痛などの症状に応じて対症療法を行います。多くは自然に改善しますが、まれに貧血などの合併症を起こすことがあります。発疹が出る頃には感染力は低下していますが、発疹が出る前の時期に感染が広がることがあります。妊娠中の方が感染すると胎児に影響する可能性があるため、周囲で流行している場合には注意が必要です。
明確な基準は定められていませんが、全身状態がよくなるまでが出席停止の基準です。
麻疹(はしか)は、麻疹ウイルスによって起こる感染力の非常に強い感染症です。高熱、咳、鼻水、目の充血などの症状が数日続いた後、顔や首から始まって全身へ広がる発疹が現れます。口の中にコプリック斑と呼ばれる小さな白い斑点がみられることもあります。診察では、発熱や発疹の経過、特徴的な症状、周囲の流行状況、予防接種歴などを確認します。簡易な検査はなく、感染が疑われた際にはPCR検査を保健所に依頼します。麻疹に対する特効薬はなく、治療は水分補給や安静などの対症療法が中心です。肺炎や中耳炎、脳炎などの合併症を起こすことがあるため、強い咳、呼吸困難、意識状態の変化などがある場合は注意が必要です。
麻疹はMRワクチンで予防することが最も重要です。麻疹が疑われる場合は、他の患者様への感染を防ぐため、医療機関への受診前には事前にお電話でご相談ください。
学校保健安全法では、解熱した後、3日が経過するまでが出席停止の基準です。
風疹(3日はしか)は、風疹ウイルスによって起こる感染症です。発熱、鼻水や咳などのかぜ症状とともに、細かな赤い発疹が顔から体へ広がります。耳の後ろや首のリンパ節が腫れることも特徴の一つで、発疹は比較的短期間で消えることから「3日はしか」と呼ばれることがあります。診察では、発疹の状態、リンパ節の腫れ、発熱の経過、周囲の流行状況や予防接種歴などを確認します。多くの場合は自然に改善するため、治療は水分補給や安静などの対症療法が中心です。
風疹の予防にはMRワクチンが有効です。妊娠初期の女性が感染すると、胎児に先天性風疹症候群を起こす可能性があるため、周囲の人から妊婦への感染を防ぐことが重要です。
学校保健安全法では、発疹が消えるまでが出席停止の基準です。
学校保健安全法で定められた出席停止期間は、症状が治まった後も感染力が残っている可能性を踏まえて設定されているため、基準の期間はしっかり守ることが大切です。
タオルの共有を避け、こまめな手洗いや換気を行うことが基本的な予防策です。感染症の種類によって感染経路が異なるため、心配な場合は医療機関に確認するとよいでしょう。
病気によって自然感染後の免疫の強さや持続期間は異なります。かかった感染症の種類によって接種の必要性が異なるため、医療機関に確認することをおすすめします。
子どもの感染症の多くは、適切なケアによって自然に軽快しますが、感染症の種類によっては登校・登園を控える期間が法律で定められています。基準を知っておくことで、園や学校とのやり取りにも役立ちます。手洗いや咳エチケットといった日々の予防に加えて、ワクチンで予防可能な感染症については、定期接種・任意接種のスケジュールに沿って接種することが重症化を防ぐうえで重要です。症状が心配な場合や、登園・登校の判断に迷う場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個々の症状・治療方針については必ず医療機関にご相談ください。内容は2026年8月時点の公的機関・学会等の公表情報に基づいて作成しています。制度やガイドラインは今後改定される場合があります。
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